無事完走なった魔法学園ジュブナイルアニメ、リトルウィッチアカデミア。
全てがベストフィルムであることは前提として、特に印象に残った七本……僕なりの『七つの言の葉』を選んで振り返ってみようかな、という記事です。
この五本だけがスゲー! というわけではなく、全話スゲーから見てねぇ人はとっとと見るが良いよ。

 

・第2話『パピリオディア』

二話目でやるべきことを完璧にこなしているのに、惰性や手抜きを一切感じない、素晴らしくフレッシュなお話だったと思います。

リトルウィッチアカデミア:第2話『パピリオディア』感想 - イマワノキワ 

最序盤のお話であるが、作品が持っている全体的なテーマ性の強さ、自分たちが作っているものへの批評眼の鋭さが鮮明で、このアニメの質の良さを象徴するようなお話。
第1話の導入を終えて今後展開するお話のモデルケースとなるわけだけども、楽しいドタバタ、暴走するアッコのエゴ、仲良しチームが形成されていくジワジワした感触と、今後核となる要素がコンパクトに、印象深く見られる。
問題解決がパピリオディアを復活させ、みんなが『うわー凄い』ってなるという、ケア&エンタテインメントというテーマをきっちり先取りしているところも、非常に良い。あとここで一回ダイアナが間違え、反省し、以降間違えない所が彼女らしいなと思う。人間として強すぎる。

 

・第6話『ポラリスの泉』

水鏡が教えてくれた過去のシャリオ、そして現在のアッコの真実こそが、厳しくも優しい真実の魔法であり、輝くシャリオに出会って魔法を追いかけてきたアッコは、今回シャリオのもう一つの側面を知ることで、憧れだけで走ってきた道から少し、方向を変えていくのでしょう。

リトルウィッチアカデミア:第6話『ポラリスの泉』感想 - イマワノキワ

このエピソードで出てきた『自分の現在を確認するための鏡としての他者』は、今後お話全体を貫通する巨大な柱として、形を変えていくども出て来る。
違うからこそ楽しい、違うからこそ改められる。 そういう多様性の肯定を声高にではなく、エピソードのうねりの中でしっかり感じさせられるのは、凄くポジティブな意味で教育的なアニメだな、と思う。
この回で得られた予感を裏切ることなく、アッコは地道に、時に引き返しつつ成長を続け、より善なる人格へと近づいていく。そういう倫理的な足取りが骨太に存在しているのは、ある意味古臭いが信頼感を強めてくれる。
アンドリュー初登場の回なのだが、読み返すとあのボーイに強く期待する自分を見つけることが出来る。異物であり劇物となり得る『ハンサムな少年』をどう使ってくるか気になっていたが、蓋を開けてみれば四人目の主人公といった塩梅。ありがたくてしょうがねぇ。

 

・第8話『眠れる森のスーシィ』

たくさんの『スーシィ』によって今回表現されたとおり、それら全てが『スーシィ・マンババラン』を構成する、かけがえのない本物(であると同時に、統制権限を持たないスレイブであり、いつでもイドの怪物と化して逆転を狙ってくる存在)なわけです。

リトルウィッチアカデミア:第8話『眠れる森のスーシィ』感想 - イマワノキワ

みんな大好きスーシィの個別エピであり、うえのきみこの奇才と繊細さが迸る傑作。おそらく短編としての切れ味は、全エピソード で最高峰だろう。
内面が見えにくいスーシィの魅力を下げることなく、夢が持つ想像力を最大限に活用し、スーシィの人格的多様性、記号的なキャラを超えた人間味をぐっと掘り下げてくれた。この回があるおかげで、スーシィは『ただの変なやつ』ではありえない、書割を超えた陰影を手に入れられた。
そういうキャラがいることが、シリーズ全体に血肉を宿し、嘘っぱちの物語ではない実感を産んでもくれる。個別エピソードの仕上がりは、そのキャラだけではなく作品全体にも大きく影響するのだ。

 

・第17話『アマンダ・オニール・アンド・ホーリィ・グレイル』

アッコが歩むものとはまた違う物語、違う答えを彼女が見つけた今回は、物語全体の価値体系に奥行きを出す、とてもいいお話だったと思います。

リトルウィッチアカデミア:第17話『アマンダ・オニール・アンド・ホーリー・グレイル』感想 - イマワノキワ

 前半折り返しであり『劣等生軍団の奮闘』路線の集大成といえる第13話と迷ったが、こちらをチョイス。アマンダ個別回であると同時に、『男子校』という異界を舞台にすることで作品の横幅を作り、風通しが良くなった回でもある。
アマンダのボーイッシュなキャラクター性を踏まえ、『男の世界』でラフに、タフに暴れさせる運びも良いのだが、最後の最後で『魔女』というアイデンティティに帰還し、自分を少し誇れるようになって終わる後味がとても良い。
あとシナリオヒロインであるルイスの成長と、アマンダが自分を大事にできるようになるまでの歩みがシンクロしてて、非常に見通しが良いところ。アンドリュー・ボーイのハンサムで控えめな活躍も最高。

 

・第20話『知性と感性』

アッコの中のダイアナをより強く、大きくしていくことで、アッコがどう変化していくかは、今後の描写から見て取る部分です。

リトルウィッチアカデミア:第20話『知性と感性』感想 - イマワノキワ

哀しい優等生、ダイアナ・キャベンディッシュの活躍を待って待って待ち続けた身としては、蒸発するほどに嬉しかった専用回。後半アッコを支える相棒を際だたせるためか、初の2話構成でディープに掘った。
これまでも話を推進してきたアッコの身勝手な前向きさだが、形式上『イヤな優等生』であるダイアナの窮地に飛び込んでいくことで、それだけが可能にする未来開拓のパワーというのは、この回で非常に鮮明になったと思う。
また、母を失い力を奪われてなお、前を向いて進み続けるダイアナの人格的優越、気高き魂がど真ん中からガツンと殴りつけてくる回でもある。ホンマ、歴史の教科書に載るくらい立派な子ですよあの子は……。
この回でもオレのハンサム・ボーイは良い活躍をしてくれた。LOVEだぜ。

 

・第22話『シャリオとクロワ』

今回現実の冷たさ、夢の凶悪な熱気を正面から浴びたアッコは、とても傷つきました。 でも、夢という透明な翼は自己治癒力を持っているし、それが再び羽ばたけるように後押ししてくれる仲間たちのかけがえなさは、これまで幾度も描かれてきた。 どんだけ間違えてもへこたれない、悪びれない、諦めないアッコのバカで元気で頼もしい姿も、何度も見てきた。 だから、ここで終わるはずがないし、実際終わりはしないのです。

リトルウィッチアカデミア;第22話『シャリオとクロワ』感想 - イマワノキワ

 『アッコ達未来ある10代にはまっすぐに正解に突っ込んでもらうとして、クッソ拗らせた30女には失敗や怨念や感情やらのカルマを死ぬほど体現してもらって、凡人が歩く迷い路を書こうじゃないの!』という幻聴が聞こえてくる、最高の拗らせ回。
作品全体を守ってきた『信じる心が、貴方の魔法』という祝福を呪いに添加し、どことなく油断していたムードをビシっと引き締め、終盤へ向かわせる。シリーズ構成としての仕事が非常に巧い、約束された勝利の谷回である。

この後ダイアこのボルテージが針をぶっちぎる第23話もあるのだが、やはり『キラキラキレイな夢物語』という幻影を見事にひっくり返し、作品全体の陰影を決定的に深めたこのお話は、作品の質にとってすごく大事なのだ。

 

・第25話『言の葉の樹』 

本当いいアニメでした。

リトルウィッチアカデミア:第25話『言の葉の樹』感想 - イマワノキワ

 終わりよければすべてよし、とは真実であるが、良い終わりを生むためには良い始まり、良い過程が必要になる。このお話が何を語ってきたのか、どのようなテーマとモティーフを使ってきたかを精確に判別し、的確に引用してくる筆があってこそ、最終回の盛り上がりと収まりの良さもあろう。
アッコの変化と到達をアクションの中で描くクライマックスもいいし、結論は明示せずに良い創造を確信できるようまとめたエピローグの余韻も良い。簡単にいえば最高の最終回であり、そう思えるのはこのアニメが最高のアニメだからだ。
『あ、これどっかで見た!』という定番アクションをいれ、制作集団としてTRIGGERに『GAINAXの継承者』を見る層の欲望に応えつつも、過去のパスティーシュで終わらず、無限のサンプリングを続けるオタク・ニヒリズムから脱却しうるベーシックで力強い運びにしたのも、とても良かった。
これは今石洋介ではなく吉成曜だからこそ可能な作家性かなぁ、とも思う。そういう意味でも、多様性の物語を見事に走ったのだ。TRIGGER新境地として、しっかり祝福されるべきシリーズだと思う。